気ままにツーリングとモトブログ【I LOVE CB750F】

オーナーとなり39年目の愛車のCB750F。ついに還暦になった「ちゃれさん」がこのCB-Fを使って10数年後に最年長モトブロガーを目指す日記です(笑)

もし、CB-Fがロングセラーだったら物語⑯「片山敬済」

年老いた職工たち・・・それは、かつてホンダがGPに初参戦をした時代の
名職人たちだったのだ!
高回転高出力を狙い、2万回転オーバーすら可能にした時計のように精密なエンジン・・・。
このエンジンを短期間で開発し、実際にGPレースに投入してきた縁の下の力持ちたち・・。
図面も間に合わず、現物あわせでモノづくりをせざるを得なかった時代・・。
こういう名工がホンダを影で支えていたこと・・・。
それを本田宗一郎は誰よりも良く知っていた・・・そして若い研究所員たちに伝えたかった・・。
そして、現物あわせでも、ヤル気になれば出来ること・・・も。
時代の変化により忘れてしまったホンダスピリッツ・・・これをCBにつぎ込むことで
次代を担う研究所の若者にホンダの未来を託すのが、自分の最後の仕事だと認識していた。

そして3日後、CB750F V-TECが名工たちの腕により完成する。
その姿は、ノーマルのヘッドより数ミリ大きいだけで、形状はノーマルとほとんど変わらない。
しかし、中身には、超小型化された最新鋭の可変バルブタイミング機構が詰まっているのだ!

「いや~、久々に気持ちのいい仕事をさせてもらった・・・ありがとう」
そう言って、試作室を立ち去ろうとする老職工たちに、研究所一同は深々と頭を下げ
「ありがとうございました!」と大きな声で礼を尽くす・・・その横には微笑んでいるオヤジが立っていた。

しかし、佐藤には不安もあった・・・。
いかに腕の良い職工とは言え現物あわせだし、あそこまで小型化したらパーツがパワーに
耐えれるのだろうか?実際にテスト走行してみるまでは素直に喜べない・・・。

早急にテストコースに持ち出されたCB750F V-TECは、様々な条件下で走行テストを開始。
問題となっていた極低速でのトルクはあっさりとクリアする。
しかし、今度の問題は高回転である・・・・パワーに耐えれるか?
ストライダーは、全開走行にはいる・・・・、レッドゾーンの14500までぶん回す。
ここで壊れたら、全てがおしまいである・・・コース脇でみている佐藤の手に汗がにじむ・・・。
オヤジさんは、じっとコース上のCBをにらみつけたままだ・・・。
そんな外野とは関係ないかのごとく、テストライダーはコース上で、ハイスピードのまま
GPさながらの猛アタックを始めたのである!
CB750F typeRが史上最強のCBとしてたたき出したテストコースのラップレコードに匹敵するタイムが出る。
エンジンはそれでも壊れなかった。
成功だ!佐藤は全身の力が抜けていくようだった・・・。
その佐藤のいるコース脇にテスト走行を終えたCBが帰ってくる。
そして、CBから降り立ったライダーがヘルメットを脱いだ瞬間、佐藤は目が点になった・・・。
片山敬済!がそこに立っていたのである。

つづく・・。