気ままにツーリングとモトブログ【I LOVE CB750F】

オーナーとなり39年目の愛車のCB750F。ついに還暦になった「ちゃれさん」がこのCB-Fを使って10数年後に最年長モトブロガーを目指す日記です(笑)

もし、CB-Fがロングセラーだったら物語⑮「伝説の職工」

オヤジに怒鳴られてから、研究所の全員で徹夜で各パーツの小型化が検討された。
理論上は、チタン等の素材を使えば強度を保ちながら小型化が可能なことは
計算で出た・・・・しかし、ノーマルCBのヘッド形状をほとんど変更せずに限られたスペースに
V-TECを詰め込むための各部品の図面を強度計算しながら設計していくと
実際の部品を作る時間がないばかりか、走行テストや耐久テストをすることすら出来ない・・・。
しかし、時間いっぱいまで、できる限りのことをするしかないな・・・それで間に合わなかったとしても
目いっぱいガンバっての結果なら、オヤジさんも納得してくれるだろう・・・。
半ば、研究所員たちにあきらめの雰囲気が漂っていた。
翌朝の朝一番で、オヤジさんが試作室に入ってきた。
大声で「どんな、あんばいだ!」とギロリとにらみを効かせる。
どんなあんばいもへったくれもない・・・・昨日の今日である・・・。
試作室のデスクの上に散乱している計算式のメモをささと目を通すと・・・
「おい!佐藤!理論的には出来るんだな?」
佐藤が理論上は出来るが、実現化する時間が足らないことを告げると、
「ふん!そんなことぁ~わかってるよ」
「おい!みんな入ってくれ!」
オヤジの声に反応して、初老の男達が数人、ホンダの作業ツナギを着て試作室に入ってきた。
どう見ても、かなり前に定年退職したような人たちである・・・。
彼らに向かってオヤジは「すまねえが、若いもんに手を貸してやってくれ」

年老いた職工たちは、にこやかに
「オヤジさんに家にまで来て頼まれちゃ、断れんですなぁ」と笑いながら、
「コレですか?ワシらが作るモンは?」と佐藤に問い掛ける。

「はぁ・・・」佐藤は何が何だか?わからない・・・。

職工たちは、図面も計算式も見ずに、箱型になったエンジンをいろんな角度から見ながら
フムフム・・・とか言っている・・・。
「いや~、これはおもしろいもんを若い人らは作ったもんだねえ~」
「おうおう!腕が久しぶりに鳴りますなぁ~」
「さて、おっぱじまめるかな」とか・・・てんでに言っている・・・。
オヤジが、「ブツブツ言ってないで早く作れ!」と大声で怒鳴る。
オヤジの大声に、研究所員たちは、一瞬ビクっとするが、職工たちは全く動じない・・。
そればかりか、鮮やかな手つきで、チタン材を手にとると試作室のNC工作機を使って
切ったり、削ったり、磨いたりを始めたのである・・。
そして、削りだしたモノをエンジンに当てると、また削ったり磨いたり・・・
これらの作業の繰り返しをしている・・。
「まったくGP出てたときみてぇ~だな・・・」
「そうそう・・・次のレースまでに4気筒を5気筒にしろ、とかなぁ・・」
「こんなん作れ、あんなん作れってなぁ・・・懐かしいねぇ・・・」
そんな年老いた職工たちの独り言を聞きながら、佐藤は驚いた!

つづく・・・。