オヤジさんとともに会場入りした六本木こと藤沢氏は、
「いや~盛大に集まってくれてるねぇ。これで売れてくれりゃ、アタシは金つくらなくても
すむねぇ・・・笑」肝の据わった人である。
しかし、ヤマは緊張してるんじゃないかい?
「ここはアンタの出番だよ」
と、本田宗一郎氏に笑いかけた。
「・・・だな。」とオヤジさんは答える。
オヤジさんは、大声で
「やあ~やあ~、皆さん、ご存知の通り、俺っちの会社もてぇへんなことに
なっちまって、こんなモノしか作れんのは情けない限りだわ・・・ワッハッハッハ」
生来、陽気なオヤジさんである。
「だがな~、プレスの皆さん、俺っちの関わった中で一番の出来だ!」
「配った資料なんかじゃ何もわからんねーよ、皆さん方」
「乗ってみりゃ、わかるってもんよ~。
わかんね~ヤツは、バイクを語る資格ね~ぞ、ワッハッハ」
「さあ~、乗った!乗った!」
ビックリしたのは、バイクジャーナリスト達であった。
言ってみれば、本田宗一郎氏はホンダならずバイク界のカリスマである。
そのカリスマが、1番ので出来だと言う、良さがわからないと
バイクジャーナリストとして認めないと言うのだ。
とにかく、乗ってみるしか方法がない・・・。
用意された輸出仕様の100psバージョン数台に、プレス連中は乗り
鈴鹿サーキット西コースに出た。
「なんだ?これは?」
軽快という言葉では簡単に語れない。動き出した車体に、全く重量感がないのだ。
機敏そのもの。まるで400ccのようだ。
おまけに13000まで回るエンジンはピーキーではあるが、パワー感も十分すぎるほどにある。
何よりも、回して楽しいのだ!
こんな古い設計のバイクをここまで仕上げるとは、さすがホンダだ!
同世代にリリースされた競合車の中でもCB-Fのエンジンレスポンスや
ハンドリングの軽快性は群を抜いていたが、それを上回るインパクトがあった。
操る楽しさのあまり、延々と試乗を続けるジャーナリストがいたほどである。
つづく・・・。